主人より幼き者

館の主人よりも優れた能力を持つ子がいてはならない…
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「ええ…はい…分かりました」
「母上。医者は何と?」
「先程、お祖母様が亡くなられました」

祖母が亡くなった。
老衰だったそうだ。

「会社は…わかってるわね」
「はい、お祖母様から聞いております」

祖母が管理していた巨大な企業は年の離れた妹に相続される。幼い妹がこの家の主人となる。
両親は議員のため不可。
通常であれば長男である自分だが…女性向け製品を取り扱っているので、男性がトップでは従業員が納得しないそうだ。

妹の立場が上になるのはやや複雑ではあるが…仕方がない。
自分は普通に働いて、普通に暮らせればそれでいい。
相続争いは起きない。それで終わる話だと思っていた。

「貴方にはとある処置を受けて貰います」
「はぁ…」
「これから当家が管理する施設に向かって貰います」
「わかりました…?」

よくわからないがとりあえず返事をする。
一体何だろうか…


「これを着なさい」
「そんな…こんな服…」
「今の貴方の身の丈に合った服でしょ」

渡されたのは妹が2歳だった頃に着用していた服…とデザインは同じ。
小学生の肉体に合わせて作られたワンピース型のロンパース。
大きな大きな女の子用の紙おむつもセットで渡された。

母と妹の前で袖を通す。
自分の肉体は、15年間の成長を奪われた上に性別を変えられてしまった。
8歳になった妹よりも幼い7歳女の子の肉体。

「あれっ…ああっ…」
「おにーちゃん!おむつは自分でつけれないんだよ!ママにお願いしないと!」

テープタイプのおむつは床に落ちてしまった。
家の当主より優れた者がいるのはおかしいとは母の弁だ。
気がついた時には何もかもが妹以下の能力に変えられてしまった…

「おむつを…つけてください…」

地面に寝転がっておむつを受け入れる。
母の手によっておむつが当てられ…股をふわふわした生地に包まれる。

「あー!おにーちゃんお漏らししてるー!」
「え…?」

尿意はなかった。しかし気がついた時には漏らしていた。
止めたいのに…どうやって止めればいいのかわからない…

「お姉ちゃんに変えて貰いなさい」
「え…お姉ちゃん…」
「そうでしょう?妹よりも幼いのよ」

情けない…本当は兄なのに…
こんなの絶対におかしいのに…
おむつ気持ち悪いから変えて欲しいという欲望がどんどん大きくなっている。

「お姉ちゃん…おむつ変えてください…」
「いいよ!私おむつ変えるの得意!」

恥ずかしい…のに…抵抗できない。
おむつを外されたら不安な気持ちが湧き上がってきた。
精神的な感情と肉体の感情が一致しない。

「頑張ったね。えらいえらい」
「うぅ…」

妹に頭を撫でられる。
暖かくて…気持ちいい。

抗議して戻して貰おうという想いと、理不尽な屈辱に対する怒りが消されてしまう。
この体はママとお姉ちゃんが大好き。近くにいる事を意識するだけで意識が持っていかれそうになる。
思いっきり甘えてしまいたくて仕方がなかった。

「かわいい〜」

鏡の前に立たされる。
紛れもない自分の姿。幼さしかない少女。
鏡の中の自分は顔を真っ赤にしてもじもじしていた。
仕草まで幼くなってしまっていた。

「もし他の人に中身が大人の男だってバレたら体を赤ちゃんにするからね。ベビーベッドから逃げ出せない様に」
「そんな…」
「自分の意思で歩けるだけ感謝しなさい」

今日から幼い女の子の様に振る舞う事を強制される。
いっそ赤子にされた方が楽だったかもしれない。

「自分の年齢と好きな物を言いなさい」
「年齢は7歳です…好きな事はおままごとで遊ぶ事です…」
「よくできました」

7歳というのは年齢だけだ。好きなこと、運動能力、知識は2歳相当にされてしまった。
どれだけ頑張っても妹に勝てない様に。
頭の中に知識はあるが言葉にできない。無意識であれば使用できるが、意識すると途端に消えてしまう。会話は可能だが、問題にされると答えられない。
元々好きだったアニメに対する興味はおままごとに上書きされてしまった。

下げられた年齢よりも幼い子にされてしまった…


変化してからしばらくだったある日の事。

ワンピース型ロンパース姿のままホームセンターにきていた。
自分のおむつは自分で買ってこいと言われた。

「ママーあの女の子おむつしてる!」

逃げたい…今すぐに隠れてしまいたい。
しかしよちよちと歩くことしかできない。
恥ずかしい姿を周囲に見せつけている。

2歳の運動能力ではまだ走ることはできない。どうやって体を動かせばいいのかわからないのである。

「そんな…」

おむつコーナーの前で途方に暮れていた。
大きな需要がない小学生用の大きなおむつは上段の端に設置されていた。
手が届かない。

「あのっ…えっと…」
「どうしたの?ママとはぐれちゃった?」
「お使い…あの…おむつ…とってください…」
「えらいね。はいどうぞ」

小さな腕でおむつのパッケージを抱える。
おむつをつけていることが明らかな恥ずかしい姿。
でも…それどころではなかった。

「あっ…あっ…やだぁ…」

尿意を感じる前に恥ずかしい音が響く。
水を吸ったおむつが重くなる。
目を瞑っておむつのパッケージをギュッと抱えることしかできなかった。

「あ、お漏らししちゃった?」
「はい………」

店員さんの目の前でお漏らししてしまった。
自分の現状が信じられない…どうすればいいのかわからない…

「やっぱりお漏らししちゃったね」

物陰から現れたのは妹だった。
見られて恥ずかしいのに、安心してしまっている自分がいた。

「おかーさんに頼まれてついて来たの!大丈夫、お姉ちゃんが変えてあげるからね!」
「ありがとう…」

もうダメかもしれない…妹の言葉を嬉しく感じてしまうなんて

自分の前を自信満々に歩く妹の姿が酷く眩しく見えた。

「じゃあおむつ交換するからね」
「ここで…?」

連れられて来たのはホームセンターに併設されたキッズルーム。
小さな子供たちが遊んでいる。

「ゴロンしてね」
「くぅ…」

床に寝転がる。
というよりは気がついたら床に寝転がっていた。
妹のこの一言にすっかり躾けられてしまっていた。
逆らうことはできない。

「見ないで…」

突き刺さる小さな子供と保護者の目線。
もうどうにかなってしまいそうだ…。

「どう?気持ちいい?」
「うん…」

心が幼くなっていくのを感じる。おむつを濡らすたびに難しい事が分からなくなっていく気がする。

初めの頃は意識しないとできなかった幼い振る舞い。
今じゃ意識していないと幼い振る舞いになってしまう。
意識がこの体に乗っ取られつつある。

「おかーかんに電話して迎えにきてもらうから。しばらく遊んでてね」

知っているはずのキッズルームのおもちゃは『未知の楽しそうな物』に変わってしまった。
手が止められない。楽しくて仕方がないのだ。

中身が大人だとバレることはなかった。
それどころか中身が幼いと思われてしまっていた。


妹の通う小学校は私立。つまり入学試験が存在する。
簡単な問題のはずなのに…

「うぅ…」

何もわからない。
問題が解ける解けないではない…問題文が読めない、そもそも鉛筆をどう握ったらいいのかわからないのだ…

「くそ…」

もちろん前日まで必死に勉強しようとした。
しかし無駄だった。

物を覚える能力を限界まで下げられた上に、覚えた知識を記憶に留める能力を限界まで下げられた肉体。
どれだけ勉強したって次の日には綺麗さっぱり忘れてしまう。

「あっ………」

不意に暖かくなるおむつ。おもらしをすると…精神が幼くなってしまう。

(えっと…こういう時は…)

席を立って黒板前の先生の前に行く。
ロンパースのフロントホックを外してしまう。
股下を通っていた布が垂れる。

おむつを濡らした場合、先生に教える。
幼くなった精神はこれ以外理解している事はない

「せんせー…おむつ…かえてください」
(やった…!ちゃんと言えた!褒めて貰える!)

誇らしかった。
自分はみんなよりできるんだって。おむつ濡らしたことをちゃんと言えるんだと。

「どうやら君はここに来るべきではない様ですね」
「えっ………あっ………」

正気を取り戻す。取り戻さないほうが幸せだったかもしれない。
今自分が何をやってしまったのか自覚する。

一緒にテストを受けていた子たちの馬鹿にする様な目線。
もう…だめだ…こんなの耐えられない。

「保健室に行きなさい」
「はい…」

おむつを丸出しのまま教室から放り出される。

もしかしたら自分は能力があるのではないか。体は幼いがちゃんとできるのではないか。
そんな思いが打ち砕かられる。

「ひぐっ…えぐっ…」

泣きながら校内をさまよう。
授業中の在校生に見られている。
保健室の場所はテスト前に教えられたのに…わからない。
怖い…いやだ…

「もう大丈夫よ」
「おねえ…ちゃん」
「よしよし」

幼い妹の手に心の奥底まで喜びを感じていた。
羞恥とか屈辱だとかもうどうでもいい。

「うぁああああん」

声を大にして泣いていた。

元のプライドだとか意思だとかは全部まとめて折れてしまった。
もうどうでもよくなってしまった。


「今日はお集まりいただきありがとうございます。本日は亡くなった私の母が務めていた企業の後継者についての発表です」

舞台に上がったのは幼いながらもしっかりとしたお姉ちゃん。
新たな当主に相応しい佇まいを周囲に見せつける。

参加者の一人が声を上げた。

「待ってくれ、確か長男がいただろう?その…相続争いは…起きないのか」
「それなら心配ありません」

私は舞台に上がった。

「こんばんは。私は元長男です。元々は22歳の男性でしたが…これからは2歳の女の子になります。体は7歳ですが…実力は2歳の女の子です。まだおむつが手放せません。元々の勉強した事は全部忘れて、頭もとっても悪くなりました」

純白のドレスをたくし上げ…膨らんだおむつを見てもらう。
もう恥ずかしくない
ママとお姉ちゃんがついてるから。

「ママとお姉ちゃんがいないと何にもできなくなりました。これからはママとお姉ちゃんとたのしくくらしたいとおもいます!」

ママ、お姉ちゃん。大好き!