妹錬成法

弟に妹にされて…
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何処にでもあるような一般家庭。父、母、兄、弟の四人家族で暮らしている。
その家の兄は大層優秀であったが、弟の方はそうではなかった。
両親は兄の方を可愛がり、弟は無視され続けていた。

だから誰も気が付くことができなかった。弟が怪しい呪法を調べているなど。
そしてそれが本物であると…


弟の部屋がノックされる。入ってきたのは少女であった。
何かに怯えるように涙を流している。

「怖いかい?ほら、膝の上においで」
「うん…」

兄が朝起きると体が幼女になっていた。体だけではない、部屋が女の子の部屋になっていた。
ピカピカの赤いランドセルが置かれ、ひらがなで名前が書かれた教科書。

訳が分からない状況にとても不安になって。怖くなった。
どうすればいいのかわからなくなって…『おにいちゃん』に甘えたくなった。
それしか考えることができなかった。

「おにいちゃん。わたし、どうなったの?」

口から出てくるの言葉は幼い言葉遣い。必死に絞り出された問いかけ。

「兄貴は俺の妹になったのさ。身も心もな」
「なんでぇ…?」
「優秀な兄が恨めしかったからな」
「やだぁ…」

妹は泣きながら精一杯の拒絶をする。
元弟は妹の頭を優しくなでる。膝の上に座った妹の顔から不安の色が取り払われる。
お兄ちゃんのことが大好きにされた甘えっ子の妹はお兄ちゃんに優しくされるのが大好き。

「やめてよぉ…」
「本当にやめていいかい?」
「…………」

その問いかけに答えられない。どれだけ拒絶しようとしても、心の奥が喜んでいる。
全身を兄に預けてしまいたくなる気持ちを抑えることで精いっぱい。

(わたしのからだ…おにいちゃん大好きにされちゃった…)
いくら反抗しようとしてもお兄ちゃんの膝の上でもじもじとすることしかできない。
目が勝手にお兄ちゃんの動きを追っていて…顔が勝手に崩れちゃう。

「耐えなくてもいいよ。もっとお兄ちゃんに甘えてもいいよ」
「~~~~」

言葉は妹の頭の中で反響する。甘い毒は思考に侵食する。
甘えっ子の妹としての欲望が何度も思考に割り込んできて考えることを中断させられる。

「甘えても…いいの…?」

拒絶してほしい。それを認められたら…私…きっと耐えられない。

トロンとした力無き顔。何かを期待したような目。
体は内心と異なった回答を期待していた。いや…心の奥では同じ回答を期待していた。

「うん。いいよ」
「お兄ちゃん大好き…」

全身の力を抜きお兄ちゃんに体を預ける。
もう抵抗なんて考えられなかった。ただこの幸せな時間がずっと続いてほしい。

(えへへ…)
難しいことが頭の中からかき消される。そしてお兄ちゃん大好きの気持ちを受け入れる。
すっかり未熟になった精神を染める。受け入れるたびに嬉しくなって…心を開いてしまう。

意識は乗っ取られてしまっていた。


不意に意識を取り戻す。下半身を圧迫される感覚。
(おしっこ…)
尿意を感じていた。

兄の部屋を出てトイレに…向かえなかった。
部屋の外で怖くなって…不安になって…足が動かない。

「まだ一人でトイレはできないようにしていおいたから。一緒にいてあげるよ」
「うん…」

顔を真っ赤に染めながらもそう答えることしかできない。
羞恥心は恐怖心に塗りつぶされていた。

「そこにいて…」

スカートとパンツを抜いてトイレに跨る…ことはできなかったのでお兄ちゃんに便座に座らせてもらった。

「スカートを脱ぐ必要はないんだよ(笑)」
「うぅ…」

馬鹿にされるが言い返すことができない。きっと当たり前のことなのだろうが…分からなかったのである。

(はずかしい…でも…ひとりでトイレ…やだ…)
何が正しいのかわからない。恥ずかしいことだとはわかっているけど…怖い。
どうしたらいいのか…思考能力が下がった頭では考えることができない。

「あれ…でない。なんでぇ…?」

尿意はあるのに…おしっこはできなかった。それはお兄ちゃんがおしっこの出し方を記憶から削除していたからであるのだが…。
気が付くことはできなかった。泣きそうになりながら体を揺らすことしかできない。

不意にその体が持ち上げられる。
(お兄ちゃん…♡)
不安な気持ちが取り払われ、体を預ける。
体の向きを変えられ、両足首を掴まれる。うしろから抱えられたまま大きく足を広げられる。
なんだかとっても恥ずかしいけど…いいかな。

「おしっこが出ちゃうポーズだよ。しーしーしてごらん」
「ふぁ……」

股の間から黄色い液体が弧を描いて放出されている。
当然うまく便器の中には入らず、周囲を汚している。
でもそんなことはどうでもよかった。

(ふぁぁー…でちゃったー…)
解放感とお兄ちゃんの腕の中にいる安心感でもうよくわかんない状態。
幼くなっていた心はさらに退行していた。
お兄ちゃんとおしっこ=気持ちいいという方程式が成り立つことを学んでしまう。

『おしっこといわれると放尿してしまう暗示』に気が付くことはできなかった。


(うう…帰りたい…)

小学生の頃に通っていた近所の小学校。
(また通うなんて…)
一年生の教室で授業を受ける。ただし女の子として。

本当は来たくなかった。でも…『学校はずる休みしちゃだめ』そんな気がするの。
私…本当は小学生じゃないのに…

(うぅ…わかんないなんて…)
わかるはずの簡単な問題。幼稚園児でも賢い子ならわかるであろう問題。でも…答えはわからなかった。
身体年齢は小学一年生であるが、知識と頭の回転はさらに下げられていた。
クラスの誰よりも勉強はできなかった。

「えっと…えっと…」
配られたテストに頭が真っ白。名前しか書くことができない。
本人は気が付いていないが、ひらがなが崩れた名前は読めたものではなかった。
そもそも本来の男としての名前から改変されていたのだが…考えることに必死な少女は気が付かない。

夢中になって考えていて…尿意に気が付いたのは直前だった。
(おしっこしたい…どうすればいいんだろう…)
おにいちゃんいない…どうしよう…

男としての意識と妹としての意識は融合し混ざり合っている。
違和感を感じることなく『妹』としての意識に移行してしまう。

きーんこーんかーんこーん
ウエストミンスターの鐘が鳴る。授業終了の合図。

「休憩時間中におしっこに行く…」
「あっ…だめ…でちゃう…」

仕組まれた暗示によってその場で放尿。
自分の意志では止められない。

(うぅ…)
どうすればいいのかわからない。自分で何もできない。体に逆らうことができない。
その状態が苦しくて…悲しくて…逃げたくなる。

「大丈夫。一緒に保健室いってあげるからね」
「うん…」

自分は無力…。


「迎えに来たよ」
「おにーちゃん…」

兄を見る妹。僅かに残っていた男らしさはすっかりなくなっていた。
僅かに残っていたプライドを打ち砕かれ、怯えた目で兄を見ている。

手に持っている透明なビニール袋には濡れてしまったスカートとパンツが入っている。
妹は大きなオムツをしていた。

「おしっこしちゃったんだね」
「うん…あっ」

妹のオムツが膨らんでいく。妹はもう抵抗していなかった。
気の抜けた顔でおしっこ我慢できない自分を受け入れてしまったようだ。

「大丈夫。お兄ちゃんが付いているからね」
「えへへ…」

妹はうれしそうだ。すっかり兄に心も体も許すようになっていた。
まぁそうなるように細工をしたのは自分なのだが。

妹はオムツを変えてほしいのか保健室のベッドに横になる。
『自分で変える』という選択肢が思いつかないようにしてあるので自然とこうなる。
それが正しい判断だと信じているのだ。

眠ってしまった妹に細工をする。
元兄への反逆はまだ終わっていないのだ。


「おにーちゃん…いっしょに寝て…」

可愛らしいパジャマ姿の妹が部屋に入ってくる。
不安で眠れないのだろう。

「いいよ。でもちょっとお願いがあるんだ」
「おねがい?」
「うん、ここに名前を書いてほしいんだ」
「わかった…?」

妹は不思議そうな表情をしながら鉛筆を手に取る。
もう完全に兄としての意識と能力は抑え込んでいる。お兄ちゃんに甘えることを疑問に思ってないし、紙に書かれた文字を読むこともできない。

「…?…なっ…!」
「目が覚めたかい兄貴。妹としての生活もワルこなかっただろう?」
「てめぇ…」

俺は何をやっていた!このお兄ちゃんのことをお兄ちゃんだなんて…
くそっ…頭の中の言葉が…

「そんな怖い顔しないでよ。おしっこいきたいのかい?」
「それ…や…めろ…」

ちょろろ…
体が勝手に…。止まらねぇ…。俺…漏らしてる。
おにいちゃんと一緒だから嬉…違う!こんなのはまやかし…。

「明日の学校もあるから早く寝ないと」
「誰が…」
「さっき契約書にサインしただろ。大丈夫、内心はどう思おうが体は勝手に動くから」

体を抱きかかえられてベッドに運ばれる。
うとうと…かくん…
お兄ちゃんに優しくされた体はもうおねむの時間。瞼が半分下がった状態頭が揺れる。

「ゆ…るさ…にゃぃ…」
「兄貴は今後成長することないから。さっきの契約書によって能力の成長は全て俺に反映されるから。兄貴が勉強するたびに俺は賢くなれる」
「…うぁ…だ…め…」
「兄貴はずーっと何にもできない妹。大好きなお兄ちゃんのために必死に勉強する女の子」
「ごめん…にゃ…しゃぃ…」
「今更謝っても遅いよ。…おやすみ」
「や……………すぅ・・・」

やがて睡魔に耐えきれなくなったのか眠ってしまった。
柔らかな寝息を立てている。

夢を見ているようだ。
「むにゃ…おにいちゃん…だいすき…」


あれから毎日小学校に通っている。
俺は通いたくない…でも…

「おにーちゃん!いってきます!」
「行ってらっしゃい」

体が勝手に妹として振舞ってしまう。
勝手に屈辱的なふるまいをして、お兄ちゃんに甘えてしまう。

「うーん…」
(やめろ…)
自分の体がなにかを考える度に、自分という存在が変えられてしまう。
少しずつ思考が引っ張られるのを感じる…

弟に復讐しなきゃいけない。それなのに…
(甘えたい…)
そう思ってしまう。認めたくないが…心が屈服している…

今日もその呪縛から抜け出すことはできなかった。
(今日だけだから…)
妹という立場を受け入れてしまったのであった。

成長できないのだから一度勝てなければずっと負け…そんなことに気が付く能力はもうなかった。